開業後のランニングコスト(月次の目安:人件費・家賃・リース)

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動物病院を開業した獣医師の方が、開院準備よりも“じわじわ効いてくる”のがランニングコストです。デジタルX線、超音波診断装置(エコー)、血液検査(CBC・生化学分析)、麻酔器・生体モニター、入院設備(酸素ケージ)などを整え、ようやくスタートラインに立ったあと、「毎月いくらかかるのか」「売上がまだ伸びない時期に耐えられるのか」で不安が膨らみます。特に、家賃や人件費、医療機器のリース代は固定費として重く、資金繰りを左右します。動物病院 ランニングコストを把握できていないと、開業後に“思ったより残らない”状態になりやすいのです。

開業後の悩みは「売上」より先に「経費の見えなさ」から始まる

開業後に多い質問はとても現実的です。「動物病院の固定費って毎月どれくらい?」「人件費比率は何%くらいが普通?」「家賃の目安は売上に対してどれくらいが安全?」「医療機器のリース代が想定以上に重いけど、みんなどうしてる?」。さらに、広告費をかけたいのに資金が足りない、外注費(検体検査や清掃、IT保守)が増えている、在庫(医薬品)が膨らみキャッシュが減る、といった困りごともよく起こります。

開院直後は、患者数が安定しません。予防(ワクチン・フィラリア)中心の月もあれば、手術や入院が多い月もあります。売上が波打つ一方で、家賃・人件費・リース代・水道光熱費などは一定。ここに気づいた瞬間、「開業後 経費 一覧をちゃんと作っておけばよかった」と感じる方が多いです。ランニングコストを“どんぶり”で見ていると、増やすべき投資(広告や採用)と、削るべき支出(無駄な外注や在庫過多)の判断ができなくなります。

悩みの具体例①:人件費が先行し、固定費が重すぎて身動きが取れない

開業後しばらくして起きやすいのが、人件費の先行です。愛玩動物看護師(VT)や受付は、開院初月から一定数必要になります。ところが患者数が想定より少ないと、売上に対して人件費比率が跳ね上がり、広告費や医療機器の保守費に回す余力がなくなります。すると、診療のオペレーションも回りにくくなり、口コミやリピートにも影響し、悪循環に入りやすい。ここで「採用は早すぎたのか」「でも現場が回らない」という板挟みが発生します。

さらに、人件費が上がると社会保険、制服、教育コスト、求人費用も増えます。単に給与だけではありません。人件費比率を見誤ると、固定費が膨らみ、毎月いくらかかるのかが見えにくくなります。

悩みの具体例②:在庫(医薬品)と外注費がじわじわ増え、キャッシュが減る

もう一つの典型例が、在庫(医薬品)の増加です。開院初期は“欠品が怖い”ために、抗生剤、鎮痛薬、点滴、外用薬、皮膚系の処方薬、療法食などを厚めに持ちがちです。加えて、シリンジ、留置針、手袋、消毒薬、縫合糸、ガーゼ、採血管などの消耗品も増えます。しかし、在庫は売上になるまで現金を寝かせる行為です。期限切れが出れば損失にもなります。

一方で外注費も増えやすい。検体検査(外注ラボ)、清掃、害虫駆除、医療廃棄物処理、会計・税理士、IT保守などが積み上がると、「固定費ではないと思っていた支出」が実質的な固定化をします。結果、ランニングコストが膨張し、コスト削減方法を探す状態になります。

動物病院のランニングコストを見える化し、月次を安定させる8つの実務

1) まずは「開業後 経費 一覧」を作り、固定費と変動費に分ける

動物病院 ランニングコストの把握は、感覚ではなく一覧から始まります。おすすめは、経費を“毎月ほぼ一定の固定費”と“売上や患者数で増減する変動費”に分けることです。

  • 動物病院 固定費:家賃(共益費含む)、人件費(給与・社保)、医療機器 リース代、通信費、システム利用料(レセコン・予約・決済)、保守費(機器・IT)、保険料、清掃の定期契約など
  • 変動費:医薬品・消耗品の仕入れ、外注検査費、クレカ決済手数料、フード仕入れ、臨時広告費など

この分け方ができると、「毎月いくらかかる」の最低ラインが見えます。最低ラインが見えると、資金繰りも、広告費をどれだけ積めるかも決められます。

2) 人件費比率は“理想値”より「稼働の設計」でコントロールする

人件費 比率は、開業後の安定を左右します。ただし、比率を下げるために無理に人数を削ると、診療の質が落ちたり待ち時間が増えたりして、売上にも影響します。重要なのは比率の数字そのものより、稼働の設計です。

  • 受付の業務を「電話・会計・予約・薬の準備」に分け、ピーク時間を平準化する
  • VTの役割を「保定・検査補助・麻酔管理補助・入院管理」に明確化し、院長が診察に集中できるようにする
  • 予防シーズンに合わせて、スポット勤務や時短を組み合わせる

人件費は固定費ですが、“運用”で実質的な生産性が変わります。人件費比率を改善する最短ルートは、売上を伸ばすことと、ムダな手戻り(診療オペレーションの混乱)を減らすことです。

3) 家賃の目安は「立地の良さ」ではなく“固定費耐性”で決める

家賃 目安は、開業後の安全性に直結します。動物病院は立地で患者数が変わるため、良い場所ほど家賃が上がりがちです。ただし家賃は売上が下振れしても下がりません。だからこそ「立地の良さ」と同じくらい「固定費耐性」を重視します。

実務では、売上予測が下振れした場合でも耐えられる家賃か、を先に検証します。さらに、駐車場費用、共益費、看板設置、原状回復の積立まで含めると、家賃の“実質コスト”が見えてきます。ロードサイド型で駐車場を確保するのか、住宅街で徒歩来院を狙うのかで、家賃の許容範囲も変わります。

4) 医療機器リース代は「導入順」と「稼働率」で最適化する

医療機器 リース代は、動物病院の固定費を押し上げる代表です。デジタルX線、エコー、麻酔器、生体モニター、血液検査機器(CBC・生化学)、オートクレーブ(滅菌器)、歯科機器など、積み上がると月額が大きくなります。

ポイントは「最初から全部」ではなく、稼働率が高いものから導入順を決めることです。

  • 開院初期に稼働しやすい:レントゲン、エコー、基本の血液検査、電子カルテ/レセコン
  • 症例が増えてから強化:歯科ユニット、内視鏡、より高機能な分析装置、入院設備の拡張

稼働率が低い機器は、固定費のまま利益を圧迫します。導入順を戦略化するだけで、ランニングコストの重さが変わります。

5) 水道光熱費は「設備」と「運用」で差が出る、見落とされがちな固定費

水道光熱費は、思ったよりブレます。手術や入院が増えると空調や洗濯、給湯の稼働が増え、夏冬はさらに上がります。オートクレーブや洗浄機の運用頻度、エアコンの台数、照明、冷蔵庫(ワクチン・薬品)、酸素濃縮器など、病院ならではの要因が絡みます。

対策は、節約の根性論ではなく、運用ルールの整備です。稼働のピークに合わせた空調の設定、滅菌・洗浄のまとめ運転、在庫管理の最適化(無駄な保冷の削減)など、診療品質を落とさずに改善できます。

6) 外注費は「固定化」しやすいので、契約と頻度を定期的に見直す

外注費は“変動”に見えて固定化しやすい経費です。検体検査の外注、清掃、医療廃棄物処理、害虫駆除、税理士、社労士、IT保守、ホームページ運用など、開業後に増え続ける領域です。

ここで有効なのは、外注の棚卸しです。

  • 必要不可欠か(法令・安全・衛生)
  • 頻度は適正か(月1→隔月でも問題ないか)
  • 料金体系は妥当か(従量課金のほうが良いか)
  • 院内で代替できる範囲はないか(ただし人件費とのトレードオフに注意)

外注費を見直すことは、コスト削減方法として即効性が出やすい一方、やりすぎると現場負担が増えるため、固定費(人件費)とのバランスで判断します。

7) 広告費は“削る対象”ではなく、損益分岐点を越えるための投資として管理する

広告費は、資金繰りが苦しくなると真っ先に削られがちです。しかし開院直後は認知が足りず、広告を止めると患者数の立ち上がりが遅れ、固定費を吸収できない期間が伸びることがあります。大事なのは、広告費を「使うか使わないか」ではなく、投資として管理することです。

  • Googleマップ対策(MEO)と口コミ導線の整備
  • 公式サイトの診療案内の充実(予防・皮膚・歯科など強みが伝わる構成)
  • 地域導線(看板、近隣連携、紹介カード)
  • 月次での反響チェック(問い合わせ数・予約数・来院数)

広告費を適切に管理できると、損益分岐点を越えるスピードが上がり、人件費比率も自然に改善します。

8) 在庫(医薬品)は「欠品恐怖」から「回転率管理」へ切り替える

在庫(医薬品)は、ランニングコストというよりキャッシュフローの敵です。持ちすぎは現金を減らし、期限切れはロスになります。対策は、回転率で管理することです。

  • 定番品(使用頻度が高い薬・消耗品)は適正在庫を設定
  • 使用頻度が読めないものは発注サイクルを短くし、仕入れを分散
  • 予防シーズン前は計画的に積むが、根拠なく積まない
  • フードや療法食は販売実績と連動させ、置き場コストも考慮する

在庫管理が整うと、毎月いくらかかるのかが読みやすくなり、資金繰りのストレスが減ります。

これらを実行すると、ランニングコストは「怖い固定費」から「設計できる経営指標」になる

8つのポイントを実行すると、動物病院 ランニングコストは“なんとなく高いもの”ではなくなります。固定費と変動費を分け、動物病院 固定費の最低ラインを把握できれば、売上が波打つ中でも資金繰りが安定します。人件費比率は、採用のタイミングや役割設計で改善でき、家賃の目安は“立地の憧れ”ではなく“固定費耐性”として判断できるようになります。

さらに、医療機器リース代は導入順と稼働率でコントロールでき、外注費・保守費は棚卸しでムダを削れます。広告費も「削る」ではなく「損益分岐点を越えるための投資」として扱えるようになり、結果として開業後の経費一覧が“更新される経営ツール”になります。最後に、在庫(医薬品)の回転率管理が整うと、現金の減り方が緩やかになり、設備投資や採用の意思決定がしやすくなります。

つまり、コスト削減方法は「節約」ではなく「構造を整える」こと。ランニングコストを見える化できた動物病院ほど、患者数が伸びた時にしっかり利益が残り、伸び悩んだ時にも必要な手を打てます。

本郷いわしやだからできる、開業後の“毎月の数字”まで見据えた支援まとめ

動物病院の開業は、開院日がゴールではありません。開業後に「毎月いくらかかるのか」を見える化し、固定費(人件費・家賃・リース代)を吸収できる売上構造を作っていくことが、長く続く病院経営の本体です。本郷いわしやは、動物病院の開業支援において、資金・立地・計画づくりを含めた情報発信とサポートを行っています。開業前の資金計画だけでなく、開業後の資金繰りや経費の考え方に繋がる情報も揃っているため、「ランニングコストを設計できる状態」を作りやすいのが強みです。

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